濃い灰色の「もや」のようなものが胸に憑いてしまったからお酒を飲んだり音楽を聴いたりして誤魔化してみるのだけど、もやの方がはるかに濃密で勢いを伴っていてどうしようもない夜があったりする。ほんとうに仕方がないから正体だけでも暴いてやろうとそれを眺めてみるけれど、言葉にできる部分はそのもやの残りかすのようなものばかりで、大切なところは空気を掴むみたいにするすると逃げてしまう。他人のことはよく目について主観任せに言いたい放題言える自分を前に、もしかして自分のネジはどこかで狂ってしまったのじゃないかとも思う。本当は誰かのことも自分のことも何一つ分かっていないのかもしれない。