例えば分厚い生肉を切った時のような、こう、赤い肉汁が少し滲んでいて、でも堂々と出血しているわけじゃない、痛そうなのに痛くなさそうな、そんな人がいたりする。あー痛々しいな、もう少し自分に対して優しくなってあげたらいいのに、と思うのだけれど、当の本人は全くそんなこと気にしていない様子で飄々としていたりするから、こっちもあれってなって、あ・痛くないのかな、そっか見た目ほどじゃないのか、とか思ったりすると、ふと思い出したかのように「痛いよー」って言って泣き顔になって駆け寄ってきたりするから困る。ああやっぱり痛かったのか、そうだよねだってそんなに赤くてチリチリとヒリヒリしてそうできわっきわの生身だもんね、そっかそっかおいで、って両手を広げるとやっぱり平気ってな顔になってまた明後日の方向に走り出す。なんなんよどっちなんよ!って私はどうしていいかわからなくて少し泣きたくなる。サンダルの紐が切れた時みたいにわたしが唐突に放り出されるから泣きたくなるっていうかちょっと泣く。泣きながら飯を喰らう。私だってーって言いながら呼吸する。一切は暴力的なまでに身勝手だ。