雨の日の憂鬱

今日は朝から雨が降っていた。だから私はいつものように傘を持って出かけることにした。


マンションの玄関に降りて、空を仰いだ。どんよりとした曇り空で、いかにもたくさん雨を含んでいそうだった。


私は向きなおり、傘を開いた。と、同時にある異変に気づいた。



「イブサンローラン…だと…?」



確かにそう傘には記してあった。予想外の出来事に私は戸惑った。こんなものを買った覚えはない。いったい何なのだこの傘は。私のベージュの傘はどこだ?



しかし反面、傘はその名前が内側に記載してあり、一見ブランド物とは分からない粋な逸品であった。ゴールドの光沢も美しい。私は思った。




「…気持ち悪ゥゥゥッー!!!!!!!!」




考えてもみて欲しい。コンビニに売ってある500円の傘を自分のそれと間違えて持って帰ったのとは訳が違う。きっとこれは、どこかの誰かがショップか何かに行って、丹念に選び、高い金額を支払って買った物なのだ。それを私はいつかどこかで持って帰ってきてしまったのだ。


きっと持ち主は思うに違いない。「盗られた!!!!!」と。そう思うとこの傘から怨念すら感じる気がする。


私は、「返したい!」そう思った。別に私は雨をしのげる傘が有りさえすればそれで良い。どこの誰の物とも分からない高い傘を使う必要はない。



しかしどこに、誰に、返せばいいのか分からなかった。警察に連絡しようかとも思ったが、事が大げさになりそうでやめた。




結局今日1日この傘とともに過ごした。っていうかマジで誰のですかこれ。
あとどんなに高価でも、車の水しぶきの前では意味ねぇんだよ馬鹿野郎(太ももまで濡れたジーンズを指さしながら)。