ふっと煙を吐き出す午前0時
月がこっちを見降ろしている
お気に入りの音楽とすこしの小銭
じゃりじゃりと鳴る足元
自販機で抜いた缶コーヒーを手の内で転がしながら
空がきれいだ、等と思う



「お前は強いなぁ」
月に向かってつぶやきかける
一人で、そんな高いところで、
毎晩、ずっと、光ってるんだもんな
遠くの星 は 仲良しで
お前はいつも 一人ぼっち


―そうなんだ
いつも そうなんだ
何者でもない僕が居て、
何者にもなれない自分を痛感する
どうしようもない青臭い思考回路が
ちっぽけな頭をパンパンにする



救いあげてくれる優しい手と
抱きしめてくれる温かな胸を
うずくまって待っている
絡まった糸をほどいてくれる
やさしい指を期待している




ウォークマンはくるくると切り替わって
缶コーヒーは空っぽになった
煙草をなじって火を消して
また いつもと同じ道を引き返す
足元の灰は 風に舞いあがって消えた